社是

社是は、言うまでもなく会社の指針ですが同時に人間の指針でもあるべきだ、と考えています。 よく理解し、自らのものとして、社会人の人生における道しるべとしていただければと願っています。
創業者
横森精文
  1. 社是 1

    各々その持ち場を守り、全員営業を心懸け、 お客さまに満足して頂くために頑張ろう。

    間は、ひとりだけでは生きられません。集団の中のひとりであるという気持ちを忘れて、私たちの社会生活は成り立ちません。私たちの生活や活動のすべてが、人間と人間の付き合いそのものだからです。会社もこれと同じです。会社という言葉を人間におきかえてみれば容易にわかることで、会社の仕事も相手があってはじめて成り立ちます。
    業も同様です。営業、つまり業を営むということは人間の営みであり、ひとりでは生きられない人間どうしのつながりが基本となります。日常の仕事においても、たとえば注文を受けた場合、資材の手配から製作・施工にいたるまで、すべてを自分ひとりの力で処理することはできません。
    料の仕入先や関連業者という、自分以外の相手と協力していかなければなりませんが、ひとりで勝手に振舞って相手と摩擦を起こすようでは、事はうまく運ばないでしょう。ではどうするか。そこでものを言うのは信用です。相手に接するときは相手を立て、誠意をもってあたれば相手もこれに応えてくれます。そこに相互信頼の絆が生まれ、喜んで自分に協力して仕事をやってくれるでしょう。そこで初めて、お客さまに満足してもらえる仕事ができるのです。世の中において真心のこもった付き合いがいかに大切であるかを、銘記しなければなりません。
    員営業ということについて、考えてみましょう。営業部の人は常にお客さまと接しているので、この意味をよく理解できると思いますが、工場で生産だけに従事している人には、ピンと来ないかもしれません。要するに、図面にもとづいて納期までに完全な製品をつくるという当り前の職務を果たすことが、単に物をつくっているだけでなく、お客さまの満足をもつくっているのだという意識を持とうということです。その製品がお客様に喜んでいただければ、信用は倍加し、ヨコモリの技術が高く評価され、次の機会にもヨコモリに注文がくるに違いありません。これが、工場で直接製作にたずさわる人の営業です。設計・施工にたずさわる人の場合も同じです。
    業部の人が走り回り、百万遍の説明をして注文をとることも大切ですが、納めた製品が好評を博し、いながらにして注文がくるのが理想なのです。

  2. 社是 2

    原価意識を旺盛に、損益分岐点を見極めて、 儲けにこだわり、損をしないことに徹しよう。

    通の商売ならば、仕入れがいくら、売値がいくらで、その差が儲けであり、その中から給料分がいくら、公租公課がいくらというように配分されることは誰にでも簡単にわかります。しかし、私たち建築業界の仕事は、そういう単純計算ではすみません。いわゆる原価というものの本質が、非常に曖昧になりがちなのです。特に各部門が分業で仕事をしていますと、自分の部門と他の部門との間で責任の転嫁、要するに原価意識の転嫁が容易に起こるものです。しかし、これは断じてあってはならないことです。こういう業種であればあるほど、その原価意識はお互いに堅持しあわなければならないのです。では、どういうものを原価と考えてやるのかといえば、ヨコモリの場合、実行予算表が基本となっています。それにしたがって、確実に、忠実に実行するほかに何もありません。もちろん、その大前提としては、この予算表の内容が妥当であることが必要です。しかもその内容が、社内に十分浸透し尊重され納得されていなければ、その基本は崩れてしまいます。
    かに実行予算表が大切なものかということは、その内容によって損益分岐点も明確になるということでもわかるはずです。したがって、各作業部門は、これに対して理解しにくい点や不適当だと思う問題等については質問し、十分に検討することは当然ですが、一旦決定したら絶対にこれを守らなくてはなりません。それが、結果において損をしないということになるのです。
    変重要なことなので重ねて述べますが、予算表をお互いに尊重して、その確度と信頼性を全員で高めていくことが根本であることを、肝に命じてください。そして誰かが注意してくれるだろう、指摘してくれるだろうと思わずに、どんなときでも自分が実行予算表の最終的な番人であるという意気込みで、仕事に従事していただかなくてはなりません。

  3. 社是 3

    創意工夫を回らして、無駄を無くし、物と時間を節約し、 手直しミスを排除して、前向き作業に徹しよう。

    たちの仕事で無駄を排除するということは、会社の利益をあげる根本であり、そのための創意工夫はあらゆる場で求められます。受注生産が基本なので非常に苦しい面もありますが、注文を受けて設計し、材料を仕入れ、工場で製作して現場に取り付けるという一貫した流れがあるということは、そこにさまざまな創意工夫の可能性があるわけです。これは物を買って、何も手をつけずに売る商売とくらべれば明らかです。そのような商売では、物をできるだけ安く仕入れ、高く売る以外にないわけですから。
    たちの仕事の場合、利益を生み出そうとすれば、そのタネは一貫した流れの中のいろいろなところに秘められているといえます。金鉱石はそこにあるわけです。それは見えにくいかもしれませんが、よく見れば金鉱石です。そこを掘り起こせば金が取れるわけで、それほど有利な立場にある仕事だといえます。仕事に取り組むとき、各自が創意工夫をめぐらすことで、材料の節約ができるかもしれない。工作の方法を変えたり、取り付け手段を改良したりすることで合理化を実現することも可能でしょう。そんなことを全社一丸となって徹底して実行すれば、いかに厳しく世知辛い世の中でも、我々の生きる道はいくらでもあります。しかも、自分の気持ち次第でできることなのです。
    の第三項を、いかに意識して仕事にたずさわるかによって、その結果は天地ほどの違いを生みます。自分のやっている仕事が前向きの作業かどうかは、自分自身の心に聴けばわかることです。前向きの作業ばかりが続くとは限らないし、なにがなんでも前向きだけを要求しているのではありません。うしろ向きの作業もあるでしょう。しかし自分の心にたずねて、うしろ向きだと感じたならば、それをいかに短時間で効率よく処理して、前向き作業に転換させるかという努力をはらってもらいたいのです。営業や施工でも、言い訳に一日をつぶすことはうしろ向きです。そんな場合には、謝罪すべきものはして、早い段階で相手に納得してもらい、その問題から一刻も早く開放されて、新しい作業をはじめることが肝心です。どんなときでも、ぜひ前向きなのかうしろ向きなのかをしっかり見極めて、仕事にのぞんでください。
    コモリに限っていえば、創意工夫と無駄の排除が十分に実行されるか、社員が前向きに仕事に取り組めるか否かが、社の命運を決するといっても過言ではありません。

  4. 社是 4

    準備周到、作業入魂、今日の仕事は明日にのばさず、 常に問題と対決して、自らが解決者となろう。

    つの仕事に取りかかる場合、準備の良し悪しは、仕事が成功するか不成功に終わるかを決定づけるものです。特に私たちの仕事において、段取りがいかに大切であるかは、皆さんご承知の通りです。
    事前になんらの準備もなく、この仕事が最終的にどんな結果になるかも考えず衝動的な行動に走る人は、いつになったら仕事が終わるかもわからず、自分で何をやっているのかさえわからなくなり、迷ってしまうものです。そんな馬鹿なことがあるかとお思いかもしれませんが、すべての人とは言わないまでも、かなりの人にみられる傾向です。この仕事は何日までに終わらせればよいか、出来上がりの姿を予想し、どのような工具がいるか、何人必要か、その他あらゆる事を想定して準備するということは、最初は無駄な時間を費やすようですが、本番になって楽に作業が進むものです。 作業入魂」は言葉どおりで、おわかりのことでしょう。
    の「今日の仕事は明日にのばさず……」は、本当に心がけ次第です。大勢の人がついつい今日の仕事を明日にのばしがちです。皆さんどなたも学生時代、学校の試験の前とか受験勉強のとき、常日頃からやっておけばよいものを、一日のばしにしたために、結局その場になって後悔するといった経験があると思います。大事なことは、常に心がけて身のまわりを整理しておいて、次の仕事を重ねて行く習慣をつけることです。
    問題と対決して……」というのは、人間誰しも何か事が起きると尻込みし、逃げてしまいがちだということです。これは人の心の弱さなのでしょうが、そんな時は、勇気をふるって、その問題と正面から対決し、自らが解決者になろうという気概をもってもらいたいものです。何か問題が起こったとき、誰かが解決してくれるだろうと、皆がその問題の周りをぐるぐる回っているということがよくあります。こういう場合は、誰かが渦中に飛び込んで問題の実態をつかみ、解決するほかに道はありません。その誰かが、あなたであってもらいたいのです。
    度自分で飛び込んで問題を解決すれば、その後は何が起ころうと恐れるものはなくなります。そして自信がつき、仕事の本当の面白さが味わえます。ぜひそのような人になって欲しいと思います。

  5. 社是 5

    自己チェックは厳正に、バトンタッチは確実に、 一人相撲をとらないで、全員の知恵と力を活用しよう。

    たちは、大なり小なりうぬぼれを持っています。うぬぼれを持てるぐらいでなければいい仕事はできません。しかし、うぬぼれだけでも仕事はできません。いまや、個人が万能選手になりきれる時代ではないのです。そういう事実を考え、自分の持ち場の中で自分に課された仕事を完遂することに努めてもらいたいと思います。なぜなら、皆さんの力の結集によって初めて会社は成り立つからです。わが社には営業・設計・製作・施工という四つの部門がありますが、それらがうまく噛み合ってこそ工事が完了し、お客さまに所定の製品をお納めできるのです。その流れのどの部分に欠陥があっても、よい結果は得られません。
    自己チェック」というのは、図面を描いた人が果たしてその図面がひとりよがりなものになっていないか、製作や施工の人の身になって検証するということです。寸法や精度など、設計として必要なものが書き込まれていることは当然で、さらに一歩、その図面が実際に生産する場合につくりやすくなっているか、工事をする際に読みやすいものであるか、要するに相手の立場にたってできた図面であるかを考えるということです。図面は次の生産や工事にたずさわる人に確実に内容が伝達されるものでなくてはなりませんが、それだけでなく、図面を描いた者として、その結果がどうなったかについても常に追跡するように心がけてください。今回はあの箇所がまずかったから、次の機会には改良して二度と同じ失敗を繰り返さないようにしようといった努力を絶えず怠らないで欲しいのです。自分としてはあの時こういって伝達したのだから、結果が悪いのは相手の責任だといっても、現実にそれが問題になり、欠陥として指摘されるとしたら、自分の描いたものが生かされていないということです。申し送りをする側も受ける側も、しっかり反省して、二度と同じことが起きないようにしなければなりません。こういうことの積み重ねによって、会社という組織はより良いものに成長するのです。
    た、会社にはそれぞれに異なる個性や才能を持った大勢の人が働いています。個人のプライドにいたずらにこだわることなく、お互いに自分の足らないところは補い合うという大きな気持ちを持って、目的を達成していただきたいと思います。

  6. 社是 6

    進んで困苦に耐え、現状に満足することなく より良きを求め、理想に向かって邁進しよう。

    たちは、仕事は常に完璧を期してやらなければならないと考えています。実際ヨコモリの仕事のやり方は、現状において最良の方法であると社内ではお互いに確信しているはずです。しかし、これまでやってきた方法で、次もまたその次もうまく行くかというと、そうとは限りません。その間に時代も変わり、人の心も変わります。そしてビジネス環境ということでいえば、競争者も相当に勉強してきます。これらにいかに対応すべきかということを考えれば、これで絶対ということはなく、たゆまぬ向上が求められます。
    とつの問題を突破するために、これまでのやり方を変えるということはとても苦しいことだと思います。そこにはさまざまな困難が伴い、猛烈なエネルギーを要します。それでも困苦をいとわずに問題をひとつひとつ解決していくことは大きな喜びにつながるでしょう。
    コモリの歩みは、みずからを追い込み、自問自答しつつ前進してきたのです。これが結局、より良きを求め、理想を高く掲げて進むということになったわけです。現状に満足しているところに、新発想・新技術・新製品が生まれるはずがないのです。
    コモリの階段は、幸いにして業界の高い評価を受けています。その反面で、次にすべきことは何かという設問に直面しています。しかし、みずから問題を提起し、解決していかなければならないというのは専門メーカーとしての使命であり、また柔軟な発想でみずから技術進歩を遂げていくようでなければ、その存続すら危うくなるのです。
    なりといえども、ヨコモリにはある程度の技術的な裏付けがありますし、社内の技術開発力に不足があっても、外部にそれを求めることが可能な環境にあります。営業の面からみても、得意先が一社に固定されているわけではなく、地域的な制限もありませんから、活動は自由自在に行なえます。そして扱う商品も制約されているわけではありませんから、自社の努力次第でいろいろなものをつくり、実を結ばせることも可能なはずです。これほど恵まれた環境というものに、私たちはもっと自信を持っていいのではないでしょうか。
    かに激動の世の中ですから、今日は良くても明日のことはわかりません。だからこそ、日々技術革新に対応できる基礎体力を養いつつ、常にみずから設問し、それに取り組む姿勢が求められています。